股関節の痛み
最も代表的な疾患は変形性股関節症です。加齢等による一次性と幼少期の先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全に由来する二次性のものとがあります。重度の場合は手術の適応となりますが、中等度までであればリハビリや投薬により機能の維持、症状の改善を目指します。手術が必要な方であっても、術前にしっかりリハビリをしていると術後の経過が良くなります。
また比較的稀な疾患ではありますが大腿骨頭壊死症という難病があります。こちらはまず手術が第一選択になります。ただ術前にリハを行っていると術後の経過が良くなります。

変形性股関節症

原因・病態

股関節の骨の表面を覆っている軟骨がすり減ることで関節が変形し発症します。日本人は発育性股関節形成不全と呼ばれる、発育の過程で骨盤の被りが浅くなる場合が多く、原因の80%を占めると言われています近年は高齢社会となった影響で特に原因となるような病気がなく加齢に伴い軟骨が傷んで発症する方が増えています。その他の危険因子としては肥満や重労働、長時間の立ち仕事などの職業が挙げられます。

症状

初期は立ち上がりや歩き始めなど初動時に股関節(脚の付け根、鼠径部)に痛みが生じます。変形が進行すると長歩きや階段昇降が困難となったり、股関節の可動域が制限されることでしゃがみ込みや正座、靴下の着脱や爪切りが困難となります。末期となると夜間寝ているときのような安静時にも痛みが出現するようになります。

検査・診断

問診、診察で痛みの部位や程度、可動域や左右の脚の長さの差(脚長差)、歩き方を評価します。
検査では、X線(レントゲン)検査で関節の隙間が狭くなる、余分な骨(骨棘)ができる、骨の表面が白く硬化する(骨硬化像)といった所見が見られます。X線検査では変化が見られない早期にはMRI検査を行うと軟骨のすり減り具合や骨髄内の腫れ(骨髄浮腫)、関節内の水腫などが見つかることがあります。

治療

まずは消炎鎮痛薬など薬の内服や股関節のストレッチ、関節周囲の筋力訓練といったリハビリテーションなど、体に負担の少ない保存的治療から始めます。杖、歩行器の使用や、股関節にかかる負荷を減らす生活指導も有効です。それらの治療を行っても痛みが強く日常生活に支障をきたす場合は手術加療の適応となります。

当院での診療内容

当院ではX線検査、MRI検査で関節内の軟骨下骨や軟骨の状態を評価しつつ、内服加療やリハビリテーションなど保存治療を行っています。X線検査で変形が高度の場合も、複数の保存治療を組み合わせて行うことで痛みがコントロールできて手術を行わずに済むことも少なくありません。特に運動療法などリハビリテーションは有効であり、疼痛に応じて無理のない範囲で積極的に行っております。
このような保存治療に抵抗性の場合は手術目的で連携病院などへご紹介いたします。